12 旧田中家住宅の利活用について

◆37番(稲川和成議員) 大きな12 旧田中家住宅の利活用について

 本市末広1丁目にあります旧田中家住宅は、その約780坪の敷地内にれんがづくり3階建ての大正10年築の本格的洋風住宅である洋館と、豪華な建築材をふんだんに使用した昭和9年築の数寄屋建築の和館をはじめとした4棟の建物が軒を連ねております。平成18年3月27日に、国の登録有形文化財に登録されております。
 この建物は、日本近代建築の父と呼ばれており、明治時代、工部大学校、現在の東京大学工学部教授として活躍、「鹿鳴館」や東京池之端に現存している国の重要文化財、「旧岩崎久彌邸」、御茶ノ水にある同じく重要文化財の「ニコライ堂」など、数々の名建築を生み出した著名な建築家で、かつ幕末、明治に活躍した狩野派の絵師、「河鍋暁斎」の弟子として「暁英」の雅号を受けた、英国出身の「ジョサイア・コンドル」の系譜を引く、歴史的・文化的・芸術的価値の高い埼玉県下有数の歴史的建造物として広く知られていると伺っております。
 また、これらの建物は、芝川の舟運を背景に栄えた本市の重要な地場産業の麦味噌醸造業により得た経済力と東京に隣接した地理的要因を生かした迎賓施設として建設されたと伺っております。
 なお、特筆すべきとして、この田中家住宅の建築施工にあたっては、地元川口の大工、石工、れんが・左官工、とび職等々、多くの職人たちが参加、その技術の粋を結集し完成させた作品であり、地元川口が育んできた貴重な文化遺産といっても過言ではありません。その後、文化財センター分館として一般公開され、現在まで生涯学習を目的としたさまざまな催しや活動、茶会や美術展覧会、音楽会、能楽公演など、文化芸術振興の場としても利用されてきており、本年6月1日には、早、開館10周年を迎えております。
 この節目の年にさらなる利活用を目指して、建物の耐震診断を実施するとのことですが、そこで質問いたします。

一般質問稲川先生似顔絵 (1)耐震診断を行うに至った理由について

 耐震診断を行うに至った理由について。

(2)今後の利活用について

 今後、この歴史的建造物をどのように利活用していく予定なのか、市の考えをお聞かせください。

一般質問答弁用

◎古澤貢生涯学習部長 御答弁申し上げます。

 (1)でございますが、旧田中家住宅は、平成18年3月に国登録有形文化財に登録され、同年6月から広く一般に建物内の公開及び施設利用を行なっているところでございます。
 しかしながら、旧田中家住宅は、完成当時の建築図面や仕様書等が残されておらず、建物の構造形式等が明らかでない状況でございます。こうしたことから、利用者の安全性を確保するとともに、早急に当該住宅の耐震性能を把握し、今後の維持管理の充実を図るため、建物の耐震診断を行うものでございます。
 次に、(2)でございますが、旧田中家住宅の今後の利活用についてでございますが、建物の耐震診断の実施にあわせ、検討を行なって参りたいと考えております。
 具体的に申し上げますと、文化財登録外であります茶室に、例えば軽食や飲み物を提供するカフェの機能を備え、大正時代の本格的洋風建築である洋館や昭和初期の数寄屋建築である和館を鑑賞後、日本庭園を堪能しながら大正・昭和初期の文化の余韻に浸っていただける付加価値の創出について、関係部局などと検討を行なって参りたいと存じます。
 今後とも、旧田中家住宅の利活用を通じ、さらなる魅力の向上に努めて参ります。
 以上でございます。

◆37番(稲川和成議員) 市長、要望させていただきます。
 今回この質問をするにあたり、私、一生懸命勉強して参りました。これは後ほど市長にもちょっと見ていただきたいなと思いますが、ジョサイア・コンドルという方は、先に述べましたように、東京大学工学部建築学科の前身である工部大学校教授を務め、この間、後に日本の本格的西洋建築家として腕をふるった秀才たちを育てた大きな功績がうかがえます。
 いわゆる四天王と言われている方々ですが、まず、その筆頭として挙げられるのは、辰野金吾です。この人は、近年、往時の姿に復元された記憶に新しい重要文化財の東京駅や日本銀行本店の設計者として有名な人物です。また、明治から昭和時代に建てられた近代建築の初の国宝に指定された「赤坂迎賓館」や「東京国立博物館表慶館」のこの建物を設計した片山東熊をはじめ、日本の近代建築の設計に力を注ぐとともに、国家の近代化に貢献した多くの建築家が名を連ねています。そして、本市の田中家住宅は、この門下の建築家の一人で、日本郵船小樽支店等、日本郵船関連の建物の設計で有名な佐立七次郎の弟子、コンドルから見て孫弟子にあたる櫻井忍夫の渾身作でもあります。
 以上、田中家住宅は、このような近代建築の父、ジョサイア・コンドルの由緒ある系譜につながる地域の重要な建物です。現在は国の登録有形文化財ですが、近い将来、その上位にある国の重要文化財指定を目指したらいかがでしょうか。そして、本市の宝として私たちの子、孫の代まで未来の宝である子どもたちに、後世長く伝えていただきたいと思います。私は、この重要文化財指定について、近い将来、成就する日がきっと来ると確信しております。市長、担当課へ強く要望を投げかけていただきたいと思います。